神話
アレクト
あれくと意味
アレクトは、罪を追う女神たちエリニュスの一柱です。名は「絶えることがない」に通じ、『アエネーイス』第7巻ではユノの命を受け、ラティウムで成立しかけた和平を戦争へ転じます。
解説
エリニュスは、血縁者への殺害や誓いの侵犯を追及する女神たちです。ホメロスやヘシオドスは、個々の名や一定の人数を示していません。アレクト、ティシポネ、メガイラという三柱の組み合わせは後代の資料で定着しました。アレクトの名は、ギリシャ語で「絶えない」を意味する語に結び付けられます。
ウェルギリウスの『アエネーイス』では、ユノがアレクトを呼び出します。ユノは、トロイアから来たアイネイアスとラウィニアの婚姻によって両陣営が結ばれることを阻もうとしていました。アレクトは蛇で王妃アマタの心を乱し、老女に姿を変えてトゥルヌスを煽ります。さらに鹿の死をきっかけに住民とトロイア人を衝突させ、戦いの合図を響かせました。
古代資料は、三女神の役割を現代の一覧表のように分担させていません。アレクトを「怒りを担当する女神」とだけ覚えると、『アエネーイス』で婚姻、土地、家族をめぐる緊張を順に戦争へ変える働きが見えにくくなります。名が示す執拗さと、争いを拡大する物語上の行動を分けて捉えると、この女神の役割を具体的に追えます。