神話

山羊魚

やぎうお

意味

山羊魚は、山羊の前半身と魚の尾を組み合わせた混成動物で、現在のやぎ座に当たる古い星座像です。メソポタミアに先行例があり、後代のギリシャ・ローマの天文神話は、この姿をアイギパンやパンの物語で説明しました。

解説

大英博物館が所蔵するバビロニアの天文表では、第10月テベトゥの星座名が「山羊魚」、現在のやぎ座に当たる名として記録されています。紀元前2100~2000年ごろの円筒印章にも、足を山羊魚の上へ置く水神エアとみられる神が刻まれました。円筒印章が表すのは神と混成動物の組み合わせです。天文表と合わせることで、山羊と魚を組み合わせる発想と星座名を、それぞれ異なる資料から確かめられます。

偽ヒュギヌスの『天文詩』には、やぎ座の形を説明する二つの話があります。一つは、山羊に似た神アイギパンがティタンとの戦いで敵を恐れさせ、魚の下半身で貝を投げたという説です。もう一つは、牧神パンが怪物テュポンから逃げて川へ飛び込み、下半身を魚、上半身を山羊へ変えたという説でした。アイギパンはパンと同一視される伝承もあれば、別の神として扱われる伝承もあります。

アポロドロスは、アイギパンがヘルメスとともに、テュポンに奪われたゼウスの腱を取り戻したと記します。この本文で中心となるのは腱の奪還です。魚の姿や星座化は、ヒュギヌスが伝える天文神話に記されています。山羊魚の姿、アイギパンの功績、パンの逃走は、資料ごとに異なる形で組み合わされました。メソポタミアにさかのぼる星座像へ、ギリシャ・ローマ世界で複数の説明が重ねられたと捉えると、図像と神話の関係を整理できます。