象徴
エジプシャンブルー
えじぷしゃんぶるー意味
エジプシャンブルーは、銅、カルシウム、シリカを高温で反応させて作る合成無機顔料です。主成分は銅カルシウムケイ酸塩 CaCuSi4O10 で、焼成して得た青いフリットを粉砕し、古代エジプトから地中海世界の絵画や工芸に用いました。
解説
エジプシャンブルーは、銅カルシウムケイ酸塩(CaCuSi4O10)を主成分とする、人工的に作られた青色顔料です。石灰、石英や砂、銅を含む原料、ナトロンや植物灰などの融剤を混ぜて高温で焼成し、できた青いフリットを細かく砕きます。フリットは、原料が焼成で反応してできる、ガラス質を含む焼結物です。粉末を結合材に混ぜると、壁画や板絵へ塗れる絵具になります。
色を生む結晶はクプロリヴァイトと呼ばれます。製造条件や粒子の大きさによって、粉青色から濃い青まで見え方が変わります。銅を含む青色材料にはアズライトやマラカイトもありますが、アズライトは天然の塩基性炭酸銅鉱物、マラカイトは緑色の塩基性炭酸銅鉱物です。原料、結晶構造、色の作り方を分けると、似た青緑の外観だけで材料を決めずにすみます。
エジプシャンブルーは、古代エジプトで早くから製造され、ギリシア・ローマ時代を含む地中海各地へ広がった色材です。メンフィス、アマルナ、イタリアのクーマエ、ギリシアのコス島には、製造に関わる考古学的な痕跡が残ります。古代の文献では、プリニウス、テオプラストス、ウィトルウィウスがギリシア語のキュアノス、ラテン語のカエルレウムという幅のある語を用いました。古い名称と現代の顔料名の関係は、文章の文脈、産地、分析結果を照合して定めます。
古代エジプトの工芸には、青いエジプシャンブルーの塊を粉砕して顔料にする例のほか、ビーズや小容器、像に用いる例もあります。一方、エジプト・ファイアンスは石英を主体にした焼成素材で、表面の青緑の釉層を作る工芸です。どちらも銅を使って青や緑を得る場合がありますが、顔料の粉末と、成形した素材の釉層では役割が異なります。
保存科学には、VIL(可視光励起赤外発光撮影)で、可視光を受けたエジプシャンブルーが近赤外線を発する性質を調べる手法があります。通常の照明で青く見えない混色や下層でも、発光画像は顔料の候補がある場所を示します。その位置にXRF(蛍光X線分析)で得た銅の分布を重ね、顕微鏡観察、ラマン分光法、FTIRなどを組み合わせれば、別の銅系顔料との区別に必要な根拠を積み上げられるのです。
創作や占いでは、自然の材料を配合し、火を通して安定した青を作る工程から、エジプシャンブルーを技術の継承、変換、遠い土地との交流の象徴として読むことがあります。この読みは、顔料の合成と流通の歴史を出発点にした比喩です。特定の神性や場所の意味を読む時は、作品に描かれた物、置かれた場面、同時代の文献を照合します。顔料名は、色材を特定する手掛かりです。