神話
ケリュネイアの鹿
けりゅねいあのしか意味
ケリュネイアの鹿は、金の角を持ち、狩猟の女神アルテミスに捧げられた雌鹿です。ヘラクレスは、この鹿を生きたままミュケナイへ連れ帰るよう命じられ、一年に及ぶ追跡の末に女神の怒りを鎮めて課題を果たしました。
解説
アポロドロスでは、ケリュネイアの鹿の捕獲はヘラクレスの第三の難業です。王エウリュステウスは、アルテミスの聖獣を生きたまま持ち帰るよう命じました。ヘラクレスは殺したり傷つけたりしないよう一年間追い続けますが、鹿がラドン川を渡ろうとした時、矢を射て捕らえ、肩に担いでミュケナイへ向かいます。
帰路でアルテミスとアポロが現れ、アルテミスは聖獣を殺そうとしたとしてヘラクレスを責めました。ヘラクレスは、エウリュステウスの命令に従う必要があったと説明し、責任を王に帰します。女神の怒りが収まったため、鹿を生きたまま王のもとへ運ぶことができました。傷つけたくないという意図と、実際に矢を射る行動が同じ物語にある点は、単純に「無傷で捕獲した」とまとめると抜け落ちます。
捕らえ方には資料ごとの差もあります。ディオドロスが挙げたのは、網を使う、眠っているところを押さえる、走り疲れさせるという複数説です。いずれも成功の鍵は力より知恵に置かれました。ピンダロスの祝勝歌では、鹿をアルテミスへ捧げたのはタユゲテとされ、追跡は北風の彼方まで及びます。また、古代の壺絵に残る、ヘラクレスが鹿を押さえて角を折る姿は、アポロドロスとは別の展開です。