神話
シュリンクス
しゅりんくす意味
シュリンクスは、オウィディウス『変身物語』第1巻で、パンの追跡から逃れる途中に葦へ変わったアルカディアのニンフです。その葦からパンが笛を作り、彼女の名を楽器に付けました。
解説
『変身物語』では、ヘルメスが百眼のアルゴスを眠らせようとして、シュリンクスと笛の由来を語ります。シュリンクスはアルカディアの淡水に宿るナイアドで、狩猟の女神アルテミスにならう生活を選んでいました。パンの求愛を退けた彼女は、ラドン川まで逃げ、追いつかれる直前に川辺の姉妹たちへ助けを求めます。
パンが腕に抱いたのは、ニンフの姿から変わった葦でした。風が葦を通り抜けると嘆く声のような音が生まれ、パンは長さの異なる葦を蝋でつないで笛を作ります。シュリンクスの変身は捕らえられる事態を避ける一方、彼女の名は追跡者の楽器へ残りました。出来事の順序をたどると、拒絶、逃走、変身が物語の軸に置かれています。
シュリンクスという語は、連ねた管へ息を吹き込むパンパイプの名称にもなりました。鳥類学では、鳥の気管が左右の気管支へ分かれる位置にある発声器官も英語で syrinx と呼びます。神話のニンフ、楽器、鳥の器官は同じ語を共有しますが、鳥の器官は音を作る身体構造を指す専門用語です。