象徴

岩緑青

いわろくしょう

意味

岩緑青は、孔雀石(マラカイト)を砕き、粒の大きさを選んで作る日本画の緑色岩絵具です。膠液と混ぜて紙や絹へ定着させ、粗い粒子から細かな粒子までを使い分けることで、濃い緑から淡い緑までを描き分けます。

解説

岩緑青の原料である孔雀石は、マラカイトとも呼ばれる緑色の銅鉱物です。主成分は塩基性炭酸銅で、鉱物を粉砕し、粒度ごとに分けて顔料にします。粒度とは粒の大きさの区分です。国立国会図書館の保存資料は、天然岩絵具の緑色として緑青と孔雀石を対応させ、膠を顔料と支持体をつなぐ接着剤として説明しています。支持体は、紙や絹のように絵具を受ける面を指します。

粒の大きさは、岩緑青を濃い緑から淡い緑まで見せる条件です。東京文化財研究所は、孔雀石由来の緑色顔料で、粒度を変えると濃緑色から薄緑色までを作れると示しています。粗い粒子では緑の強さと表面の粒立ちが残り、細かな粒子で作る層は明るくなめらかです。葉や山、水辺を描く作者は、対象との距離感に合わせて粒度と重ね方を選びます。

「岩緑青」という呼び方は、原料が孔雀石である天然の鉱物顔料だと示すために役立ちます。資料に「緑青」とだけあれば、孔雀石の緑色顔料を指すことも、銅や銅合金に生じた腐食生成物や歴史的な銅系顔料を指すこともあります。新岩緑青は、釉薬と金属酸化物を焼成して作る着色ガラスを砕いた人工材料です。これらは同じ名称として置き換えず、制作時期、画材の記録、分析結果を照らし合わせます。

保存科学では、緑に見えることや銅が検出されることだけで岩緑青とは断定しません。東京文化財研究所が伊藤若冲『動植綵絵』を調べた例では、銅を含む複数の緑色材料と有機染料を分けて検討しました。蛍光X線分析は、X線を当てて含まれる元素を読む方法です。元素の情報に、粒子や色層の観察、制作年代、関連記録を重ねることで、孔雀石由来の岩緑青という候補を確かめます。

占いや創作で岩緑青を読むときは、同じ鉱物を粒ごとに選び、画面へ濃淡を重ねる工程から、育てたいものへ少しずつ手を加えることや、近くで見ることと全体を見ることを連想する場合があります。これは画材の工程と画面効果をもとにした現代の比喩です。孔雀石の組成、顔料の原料、作品の年代を示す事実とは分けて考えます。