神話
ケレスとトリプトレモス
けれすととりぷとれもす意味
ケレスとトリプトレモスは、穀物の女神ケレス(ギリシャ名デメテル)がエレウシスの青年トリプトレモスに穀粒を授け、農耕を各地へ伝える使命に送り出す神話図像です。麦穂、松明、翼のある車、車を引く蛇や竜が人物を見分ける手がかりになります。
解説
『変身物語』第5巻では、ケレスが二頭の竜を翼のある車につなぎ、トリプトレモスに種を与えて、長く耕されていない土地へまくよう命じます。彼はヨーロッパとアジアを飛び、各地へケレスの贈り物を届けました。この贈り物によって、穀物を育てる農耕の技術が各地へ広がります。
古代の壺絵には、トリプトレモスが翼のついた車に座り、デメテルから麦穂を受け取る姿があります。松明を持つ女神や、娘ペルセポネ(ローマ名プロセルピナ)が加わる例もあり、いずれも旅立ちを控えた集まりです。麦穂を差し出す女神と出発を待つ車の組み合わせから、穀物の贈与と旅立ちの場面だと分かります。
メトロポリタン美術館の「エレウシス大浮彫」では、デメテルとペルセポネが裸の少年に手を差し伸べます。この少年はトリプトレモスと考えられていますが、両女神の手元にあった物が何だったかは不明です。翼のある車も表されていないため、三人の配置と、同時代の壺絵との比較から人物を捉えます。同じ物語でも、この浮彫は穀物を授ける場面、壺絵は世界へ向かう場面を選んだ作品です。