神話

ネッソスの衣

ねっそすのころも

意味

ネッソスの衣は、愛を取り戻す薬と偽られた血が、ヘラクレスの衣を致死の毒へ変える物語です。渡河中のデイアネイラを連れ去るケンタウロス、弓を引く英雄、祭壇で衣を引き裂く英雄が、欺きから死へ進む段階を表します。

解説

オウィディウスの『変身物語』第9巻では、増水したエウエノス川で、ケンタウロスのネッソスがデイアネイラを対岸へ運ぶ役を引き受け、途中で連れ去ろうとします。ヘラクレスはレルネーのヒュドラの毒を塗った矢で彼を射ました。死に瀕したネッソスは毒の混じった血を衣に染み込ませ、衰えた愛を戻す薬だと偽ってデイアネイラへ渡します。

年月が過ぎ、デイアネイラはヘラクレスがイオレを愛しているという噂を信じます。夫の愛を取り戻すため、使者リカスに衣を届けさせました。祭壇の熱で毒が溶けて皮膚に入り、衣をはがすと肉も裂けます。デイアネイラは薬だと信じて送り、その後で毒だったと知りました。

美術では、ネッソスがデイアネイラを運び、対岸のヘラクレスが弓を構える渡河場面が多く描かれました。ルカ・ジョルダーノの《ケンタウロス、ネッソスの死》は、血の付いた白い衣を持つネッソスを前景に置き、遠景のヘラクレスと一画面にまとめています。焼けつく衣を主題にした作品では、祭壇、衣を引き裂く動作、オイタ山の薪の山が後半を見分ける手掛かりです。