哲学・心理
膨張色
ぼうちょうしょく 別名:expansive color・expansive colour・膨張カラー意味
膨張色とは、同じ寸法の図形でも、周囲と比べて面積や幅が大きく見えやすい色を指す配色語です。明るい図形を暗い背景に置く組み合わせが代表例ですが、効果の向きと強さは輝度差、背景、図形の大きさ、観察条件で変わります。
解説
明るい図形を暗い背景へ置くと、同じ寸法の暗い図形を明るい背景へ置いた時より大きく見える現象は、光滲またはイラディエーション錯視と呼ばれます。ウィールは一九七五年、平均輝度を一定に保った正方形を使い、見かけの大きさとコントラストの関係を測りました。明暗が最大の条件では明るい図形が大きく見えましたが、コントラストが低い条件では暗い図形が大きく見える結果へ反転しています。
クレムコウらは二〇一四年、ネコの視床と視覚皮質、サルと人の視覚応答を測り、明るさの増加を受けるON経路と暗さの増加を受けるOFF経路を比較しました。ON経路では輝度増加への応答が早い段階で飽和し、明るい刺激の受容野が暗い刺激の受容野より広がる結果でした。この非線形な応答を使った模型は、明るい図形が暗い図形より広く知覚される現象を再現しています。人を対象にしたポンスらの研究でも、暗い背景上の点状の明るい刺激で神経的なぼけが強まり、大きさの推定誤差につながる結果が得られました。
膨張色の目安として使われるのは、高明度色です。面積効果の向きは、色相と周囲の条件の組み合わせで変わります。結果を左右する条件には、背景との輝度差、境界の鮮明さ、図形の大きさ、観察距離、表示面の光のにじみがあります。白い文字を黒い背景へ置く場合も、文字の太さと字間を実画面で見比べる作業が必要です。物体の寸法そのものは、定規や画像上の座標で測定できます。
収縮色は面積や幅が狭く見えやすい色、進出色は同じ平面上で手前へ出て見えやすい色という区別です。評価対象は、前者が見かけの大きさ、後者が見かけの奥行きです。カードや図版では、対象と背景の色、実寸、輝度差、境界、重なりを観察事実として残します。開放、存在感、拡大などの象徴は、図形が周囲へ広がる構図や物語上の変化がある時に解釈として加えます。