哲学・心理
エーテル
えーてる 別名:ether・aether・エーテル体・luminiferous ether・光エーテル・Aether・Æther意味
エーテルは、古代ギリシャ語のアイテル、アリストテレスの天上の第一物体、近代物理学の光を運ぶ媒質仮説など、時代ごとに異なる概念へ使われた語です。どの意味かは、著者、年代、分野から特定します。
解説
古代ギリシャ語のアイテルは、明るい上空や澄んだ空気を表す語です。ヘシオドスの『神統記』では、アイテルは夜とエレボスから生まれた神格として系譜に置かれます。神話上のアイテルについては関連ページで扱い、ここでは同じ語をもとに後世へ広がった自然哲学と物理学の概念を区別します。
アリストテレスは『天について』で、土、水、空気、火と性質が異なり、円運動を本来の運動とする天上の第一物体を論じました。この天上の物体は生成と消滅を免れるものとされ、後世には第五の元素、つまり第五元素と呼ばれます。ここでのエーテルは星々の領域を説明する古代の自然哲学上の概念で、19世紀に想定された光の媒質は別の役割を持ちます。
19世紀の物理学では、光の波を伝える媒質として「光エーテル」が想定されました。地球が静止したエーテルの中を動くなら、方向によって光の伝わり方に差が出ると予想されます。マイケルソンとモーリーの1887年の実験で観測された変位は、予想値の40分の1未満でした。この実験が示したのは、想定したエーテル風の予測と観測が合わなかったことです。
アインシュタインは1905年の特殊相対性理論で、絶対静止した光エーテルを必要としない電磁気と運動の説明を示しましたが、1920年の講演では一般相対性理論の時空や重力場へ「エーテル」という語を再び用いました。後者が指すのは、機械的な物質の性質や運動状態を持たない概念です。19世紀の光エーテルと一般相対性理論の場の概念は、同じ語で呼ばれても内容が異なります。
タロットや精神世界の文章では、エーテルを見えない結び付きや霊的な媒質の比喩として用いる場合があります。この用法の根拠は、採用した思想体系による象徴解釈です。カードの図像は画像の観察、現代物理学の記述は実験と理論に基づくため、どちらも霊的媒質とは根拠が異なります。神話、古代自然哲学、近代の媒質仮説、相対論、占術上の比喩は、それぞれ別の主張を支える概念です。