神話

ミダス

みだす

意味

ミダスは、オウィディウスの『変身物語』第11巻で、触れた物を黄金にする願いと、アポロとパンの音楽競技に異議を唱えてロバの耳を与えられる出来事を経験する、伝説上のフリュギア王です。二つの逸話は同じ人物の物語として続けて語られます。

解説

黄金の力を得るきっかけは、酒神バッカスの養父であるシレノスを保護したことです。ミダスは酒に酔って捕らえられたシレノスを歓待し、十日後にバッカスのもとへ送り届けました。喜んだ神が褒美を選ばせると、王は触れる物をすべて黄金に変えたいと願います。

木の枝、石、土、麦、林檎は、ミダスが触れるたびに黄金へ変わりました。ところが食卓では、パンも肉も金属になり、水で割った葡萄酒まで口の中で黄金になります。飢えと渇きに追い詰められた王が願いの撤回を求めると、バッカスは小アジア西部を流れるパクトロス川の水源で身体を洗うよう命じました。川へ入ったミダスから力が流れ去り、物語は川砂に金が混じる理由まで説明します。オウィディウスの本文に、王女へ触れて黄金にする場面はありません。

富を嫌って野山でパンに従うようになった後、ミダスはパンとアポロの音楽競技に居合わせます。正式な審判者は、トモロス山を神格化した神でした。トモロスがアポロの竪琴を勝者としましたが、ミダスだけはパンの葦笛を支持し、判定を不当だと訴えます。アポロはその耳をロバの耳へ変えました。王は頭布で隠したものの、秘密を地面へささやいた理髪師の言葉を、そこに生えた葦が風の中で繰り返します。なお、同時代のアッシリア記録には紀元前8世紀の王ミタの活動が記されていますが、黄金の力やロバの耳は後代に発達した伝説です。