神話
エレボス
えれぼす意味
エレボスは、ヘシオドスの『神統記』でカオスから生まれた、暗闇を人格化する原初神です。同じ名は地下の暗い領域にも使われ、神格と場所の二つの用法が古代文献にあります。
解説
『神統記』では、最初にカオスが生じ、そこからエレボスと夜の女神ニュクスが生まれます。ニュクスはエレボスとの間に、明るい上空を表すアイテルと昼の女神ヘメラをもうけました。暗闇と夜から明るい上空と昼が生まれるため、エレボスは宇宙の明暗を組み立てる系譜の一部です。
同じ『神統記』は、エレボスという名を地下の場所にも用います。ゼウスは傲慢なメノイティオスを雷で打ってエレボスへ送り、百本の腕を持つヘカトンケイルたちは、地下のエレボスから光のもとへ連れ出されました。この二例でエレボスが指すのは、地上から隔てられた暗い領域です。
『デメテルへの讃歌』でも、冥界にいるペルセポネのもとへヘルメスを遣わす場面で、行き先がエレボスと呼ばれます。ここでは、暗い場所から光のある地上へ娘を連れ戻す動きが描かれました。古代文献では、暗闇の神格と冥界の暗い場所が同じ名で語られ、文脈がどちらを指すかを決めます。