神話
ヘルメス
へるめす 別名:Hermes・Mercurius・メルクリウス意味
ヘルメスは、ギリシャ神話で神々の伝令を務め、旅人、商人、盗人、死者の魂を導く神です。境界を越えて人や品物、言葉を運ぶ役割が、機知と交渉の物語へつながります。
解説
『ホメロス風ヘルメス讃歌』によると、ヘルメスはゼウスとマイアの子で、アルカディアのキュレネ山にある洞窟で生まれました。誕生した日の朝に亀から竪琴を作り、夕方までにアポロの牛を盗みます。牛を後ろ向きに歩かせて足跡の向きを惑わせるなど、幼い神の素早さと工夫が物語を動かします。
アポロは牛を取り戻すため、ヘルメスをゼウスの前へ連れて行きました。二神の対立は、ヘルメスが竪琴を演奏し、その楽器をアポロへ渡したことで収まります。代わりにヘルメスは牛の群れと鞭を受け取り、ゼウスは二神の友情を定めました。讃歌は盗みの発覚から品物の交換までを描き、和解と新しい役割が生まれる過程を伝えます。
旅人を導く役割は、生者と死者の双方に及びます。『イリアス』第24巻ではプリアモスを敵陣のアキレウスのもとへ案内し、『オデュッセイア』第24巻では黄金の杖を持って求婚者たちの魂を冥界へ導きました。紀元前480-470年ごろの壺絵には、短い外套、つば広の帽子、翼のある履物、蛇を組み合わせた伝令杖という旅装が見えます。図像が示す装備と、物語が語る案内の働きを分けて押さえると、境界を越える神という位置が明確になります。