神話
エヌマ・エリシュ
えぬまえりしゅ 別名:Enuma Elish・Enuma Elis意味
エヌマ・エリシュは、アッカド語で書かれた全7書板のバビロニア創世叙事詩です。題名は「上なる空がまだ名づけられていなかった時」を表す冒頭語に由来します。若い神マルドゥクが原初の海ティアマトを倒し、天地と人間を整え、バビロンの最高神として認められるまでを語ります。
解説
物語の写本は、アッシリアのニネヴェやバビロニア各地から見つかっています。大英博物館が所蔵する第1書板の断片98909は、ニネヴェのナブー神殿で出土した新アッシリア時代の粘土板です。現在知られる写本の多くは前1千年紀のものですが、作品がいつ成立したかには複数の説があります。後世の写本年代と、物語の成立年代を同じものとして断定することはできません。
初めに、原初の水であるアプスーとティアマトから神々が生まれます。若い神々の騒ぎを止めようとしたアプスーは、知恵の神エアに殺されました。その後、ティアマトは怪物の軍勢を率い、キングーへ運命の書板を授けます。マルドゥクは勝利した場合に最高の権威を得る約束を神々から取り付け、風と網を使ってティアマトを倒しました。
マルドゥクはティアマトの身体を分けて天と地を造り、星々の位置と暦を定めます。さらに、反乱を率いたキングーの血から人間が造られ、神々の労働と祭祀を引き受ける存在になりました。神々はバビロンとマルドゥクの神殿エサギラを築き、最後に彼の50の名をたたえます。宇宙の成立、労働の配分、バビロンの宗教的な中心性が一続きに置かれています。
後代のバビロンでは、新年祭の儀礼の中でこの叙事詩がマルドゥク像の前で朗誦されました。ただし、メソポタミアには人間創造や洪水を語る別の作品もあり、エヌマ・エリシュが地域全体で唯一の創世物語だったとはいえません。現代の象徴解釈として、このサイトでは争いの後に秩序を定める力と、その秩序が誰の労働や権威に支えられるかを考えます。この解釈は古代の本文に記された結論ではありません。