象徴

蘇芳

すおう

意味

蘇芳は、東南アジアなどに自生・栽培されるスオウの心材から得る赤系の天然染料、またはその染め色の名です。染める素材や媒染剤で黄褐色、赤褐色、紫寄りへ変わるため、色名だけでは使った染料や処方を決められません。

解説

スオウは、学名をCaesalpinia sappanというマメ科の樹木です。赤い色は芯に近い心材から煮出して得られ、綿、絹、羊毛などを染める材料として使われてきました。蘇芳という語は、この植物から取る染料と、染め上がった赤系の色の両方を指します。

媒染とは、金属塩やアルカリ性の材料を加え、繊維に染料を定着させたり色調を変えたりする工程です。国立国会図書館が公開する研究では、スオウを染めた紙は無媒染で黄褐色、明礬媒染で赤褐色、二価鉄媒染で紫に近い色として比べられています。そのため、蘇芳色という名前だけでは、どの媒染剤を使ったかまでは分かりません。

日本で蘇芳は、奈良時代の紙の染色に用いられた天然染料の一つとして挙げられています。赤い染料になる心材は広い地域で取引され、織物や紙の色に使われました。しかし、史料に蘇芳とあっても、繊維の種類、媒染、濃度、後の変色まで同じだったとは限りません。

自然染料は光に弱い場合があり、現在の外観が制作当初の色をそのまま示すとは限りません。大英博物館は、チベットのタンカに使われた蘇芳を含む天然染料について、退色を抑えるため低い照度で限られた期間だけ展示した事例を紹介しています。淡い赤を見た時は、元から淡かったのか、光や保存環境で変わったのかを、作品の調査結果と合わせて考えます。

染料の調査では、繊維から得た成分の分析、反射スペクトル、写真による多波長の記録を組み合わせます。大英博物館の研究では、蘇芳を含む天然染料の識別に、繊維光学反射分光、液体クロマトグラフィー質量分析、多波長撮影を用いています。赤く見えるだけで蘇芳と断定せず、比較試料と制作時期を重ねることが大切です。

占いや創作で蘇芳を読むなら、同じ心材からでも媒染と光で色が変わることから、条件を確かめて印象を見直す問いへつなげられます。これは染織の材料と保存状態から広げる比喩です。蘇芳の色が地位や将来を決める、という意味にはしません。