象徴

臙脂

えんじ

意味

臙脂は、深い赤から赤紫を指す色名です。歴史資料では、紅花、ラック、コチニールなど由来の異なる赤色の染料や絵具材料を指すこともあり、名称だけで成分は決められません。

解説

臙脂には、色名と色材名という二つの文脈があります。色名なら深みのある赤系統を指す語です。古い絵画資料や染織資料では、赤を得るための材料や、その材料から作った絵具までを臙脂と呼びます。こうした違いは、時代、地域、用途に関わるものです。

日本色彩学会の資料では、絵具材料としての臙脂に紅花由来のものがあり、別の種類としてラックカイガラムシ由来の紫鉱や、コチニール由来の生臙脂も挙げられています。国立国会図書館の保存資料も、古典籍の臙脂色の例としてコチニールカイガラムシとラックカイガラムシを示します。ここでいう染料は繊維などへ色を染み込ませる色材、レーキ顔料は染料を無機質の基材へ沈着させ、絵具として使える粉末にした色材です。

コチニール由来の赤は、繊維を染める染料にも、アルミナを基材とするカーマインレーキにもなります。媒染剤や酸性・アルカリ性の条件によって、コチニールの色素は赤、深紅、紫、黒へ動き得ます。臙脂という名称や見た目だけで原料を決めるのは危うい判断です。制作地、制作時期、記録、分析結果を重ねて、材料候補を絞り込みます。

カードや配色で臙脂を読むときは、深い赤の印象から、熱量を内に保つこと、経験を積み重ねた状態、ためらわず決める意思を考える場合があります。これは色名から得る現代の比喩です。歴史資料に使われた材料の成分や用途は、制作記録や分析に基づき、色名から広げる比喩とは別に位置付けます。