神話

ウルカヌスの鍛冶場

うるかぬすのかじば

意味

「ウルカヌスの鍛冶場」は、ローマの火と鍛冶の神ウルカヌス(ギリシャ名ヘーパイストス)が働く工房を描く神話図像です。炉、金床、槌、ふいご、赤熱した金属、キュクロプス(単眼の巨人で、鍛冶を助ける者たち)が工房を示しますが、作っている武具や訪問者によって物語は変わります。

解説

ホメロスの『イリアス』第18巻では、親友パトロクロスの死後も戦えるよう、海の女神テティスが息子アキレウスの武具をヘーパイストスへ頼みます。神は銅、錫、金、銀を火へ入れ、槌と火ばさみを使って盾、兜、胸当て、すね当てを作りました。テティスと、天地や二つの都市などを表した盾があれば、アキレウスの武具を作る場面です。

ウェルギリウスの『アエネーイス』第8巻では、ヴィーナスが息子アエネアスの武具を夫ウルカヌスへ頼みます。アイオロスの島の洞窟で、キュクロプスたちはユピテルの雷霆などの作業を中断し、アエネアスの盾を鍛えました。ヴィーナスが工房を訪れる絵や、完成した武具を受け取る絵は、この物語に結び付きます。

ベラスケスの《ウルカヌスの鍛冶場》は、武具の依頼とは別の出来事を描きました。月桂冠を着け、頭から光を放つアポロンが、妻ヴィーナスと軍神マルスの関係をウルカヌスへ告げる場面です。鍛冶職人たちは作業を止め、驚いてアポロンを見ています。訪問者がテティス、ヴィーナス、アポロンの誰かを見れば、同じ工房でも物語の違いを判別できます。