神話

ヴィーナスとマルス

ゔぃーなすとまるす

意味

ヴィーナスとマルスは、愛の女神と軍神の密会や、その発覚を描く神話図像です。武具を外したマルス、鳩やキューピッド、二神を捕らえる金属の網が、逢瀬、眠り、不貞の露見のどの場面かを示します。

解説

ヴィーナスはギリシャ神話のアプロディテー、マルスはアレスに当たります。ホメロス『オデュッセイア』第8歌では、太陽神ヘリオスが二神の密会を目撃し、アプロディテーの夫ヘパイストスへ知らせます。ヘパイストスは寝台に、目に見えず切れない網を仕掛け、二神を捕らえて神々を呼び集めました。海神ポセイドンが弁済を保証したため、ヘパイストスは二神を解放します。ボッティチェリの《ヴィーナスとマルス》では、ヴィーナスが目を覚ましたまま座り、裸で眠るマルスの周囲でサテュロス(ギリシャ神話の半人半獣)が槍や兜を運びます。画面で確認できるのは二神の姿勢と武具を持つサテュロスです。ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、そこから「愛が戦争に勝った」という寓意を読み取っています。原典の網を省き、眠りと武装解除で二神の関係を表した構成です。パルマ・イル・ジョーヴァネの《マルスとヴィーナス》は寝台で抱き合う二神を描き、鳩と、マルスの履物をほどくキューピッドを添えています。神々が網の周囲に集まる場面は、密会の発覚まで進んでいます。一方、眠るマルスと武具で遊ぶサテュロスは、武力が愛に鎮められたという寓意を導く構成です。寝台に鳩を添えた作品は、二神の逢瀬そのものを前面に出します。