神話
ヴィーナスとアドニス
ゔぃーなすとあどにす意味
ヴィーナスとアドニスは、狩りに出る青年を愛の女神が引き留める場面や、猪に襲われた彼の死と花への変身を描く神話図像です。槍と猟犬は出発、猪と傷は死、血から咲くアネモネは結末を示します。
解説
オウィディウスの『変身物語』第10巻では、キューピッドの矢が偶然ヴィーナスを傷つけ、女神はアドニスに恋をします。二人は一緒に狩りをしますが、女神は猪などの危険な獣を避けるよう警告しました。アドニスは猪を槍で傷つけ、反撃を受けて命を落とします。戻ったヴィーナスが血へ神酒を注ぐと、風に花びらを散らすアネモネが咲きました。
ティツィアーノは、アドニスがヴィーナスの抱擁を振り切って出発する場面を構想しました。これは、女神のほうが先に立ち去る『変身物語』の筋から画家が展開した場面です。1554年のプラド美術館版では、後ろ姿のヴィーナスが青年へ手を回し、アドニスは羽飾りのある槍と猟犬の引き綱を持って進もうとします。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーの工房版には、木に掛けられた弓矢、眠るキューピッド、猪の気配を追う猟犬、雲上を走るヴィーナスの車が描かれています。槍と猟犬は現在の出発を示す具体物です。眠るキューピッドと雲上の車は、愛の女神が青年を止められない状況と、その後の死へ向かう時間を一画面に重ねます。