神話

ヴィーナスの誕生

ゔぃーなすのたんじょう

意味

「ヴィーナスの誕生」は、海から生まれた愛と美の女神アフロディテ(ローマ名ヴィーナス)が岸へ到着する場面を表す神話図像です。特にボッティチェリの作品では、貝殻に立つ女神、風を送る二人、花模様の衣を差し出す女性が、キプロスへの到来を示します。

解説

ヘシオドスの『神統記』では、クロノスが父ウラノスから切り離して海へ投じた身体の一部のまわりに白い泡が生じ、その中で女神が育ちます。女神はキュテラを経てキプロスへ上陸し、エロスとヒメロス(それぞれ愛と欲望を神格化した神々)が同行しました。ここで語られるのは海の泡と二つの島で、貝殻は後世の絵画に加わった図像です。

『アフロディテ讃歌』では、西風が女神を海の泡に乗せて運び、ホーライ(季節を司る女神たち)が衣を着せて迎えます。風と衣はこの到着場面に結びつく要素です。ボッティチェリの絵で左から風を送る二人はゼピュロスと、おそらくそよ風を神格化したアウラ、右の女性は春のホーラまたは美と優雅を司る女神の一人と考えられています。

ウフィツィ美術館は、ボッティチェリの画面を、海から生まれた女神がキプロスへ到着する場面と説明しています。作品名の「誕生」の直後にあたる出来事です。海の泡、貝殻、風、差し出された衣を順に見ると、誕生譚のどの時点を絵にしたのかが分かります。