哲学・心理

手続き的知識

てつづきてきちしき 別名:procedural knowledge・手続的知識・ノウハウ

意味

手続き的知識は、ある課題を実行する技能に表れる知識です。手順の内容を覚えた状態と、状況に応じて行為を適切に進められる状態を分ける際に使われ、認識論の「仕方を知る」という知識と重なる論点があります。

解説

自転車の乗り方を説明できる人が、実際には姿勢を保って走れない場合があります。反対に、熟練者は動作の全てを言葉で説明できなくても、路面や速度に応じて適切に操作できます。この対比で分かるのは、手順書に記された命題と、課題の遂行に表れる手続き的知識の役割の違いです。ただし、偶然一度成功した行為や、考えずに繰り返す習慣を知識と呼べるかは別の問題です。技能、能力、知識の境界については複数の説があります。

Ryleは「仕方を知ること」と「事実を知ること」を区別し、知的な行為の前に規則についての命題を毎回考える必要があるという見方を批判しました。規則を適用すること自体にも適切な実行が必要だとすると、その実行の前にも別の命題を考えることになり、説明が後ろへ続くからです。この議論は、実践上の知性が行為の中に表れるという反知性主義の出発点になりました。

現在の議論では、仕方を知ることを命題的知識の一種として説明する知性主義も提案されています。StanleyとWilliamsonは、ある課題を行う方法を実践的な仕方で知ることとして分析しました。これに対し、命題を知るだけで技能が身につくのかという反論や、技能と知識の結び付き方をめぐる議論があります。認知科学では、健忘症の参加者が練習した鏡文字読解の技能を保持した研究が、技能学習と出来事の記憶が分かれ得る証拠として報告されました。哲学のknowledge-howと認知科学のprocedural knowledgeには重なる部分がある一方、定義と研究対象は学問領域で異なります。

手続き的知識の練習は、目標となる動作と成功条件を先に定め、実行結果を次の修正へ結び付ける過程です。たとえば面談記録の作成なら、発言を時系列で残す、事実と推測を分ける、本人の訂正を反映するという動作を実際の記録で試します。各記録を成功条件と照合すると、次に直す動作が分かります。手順書は基準を共有する資料です。命題的知識は規則や理由を言語化する部分を、暗黙知は熟練者が説明しにくい調整を考える部分を補います。

タロットの手続き的知識には、質問を一文に整える、使用デッキと配置を記録する、カードの観察事実と象徴解釈を分ける、相談者の同意範囲を守るといった実行が含まれます。カードを並べる動作が安定していても、象徴から導いた内容を外界の事実とするには別の資料が必要です。技能の評価対象は手順の一貫性、記録の追跡可能性、状況に応じた修正です。解釈の妥当性や将来予測の真偽は、別の根拠と後日の記録から検討します。