哲学・心理
暗黙知
あんもくち 別名:tacit knowledge・tacit knowing・暗黙的知識意味
暗黙知は、知覚や技能や判断を支えている一方、その全てを言葉や規則として表しきれない知の側面です。マイケル・ポランニーは、人は語れる範囲を超えて知るという考えから、暗黙的に知る仕組みを説明しました。
解説
ポランニーは、杖を使って物に触れる例で暗黙的に知る仕組みを示しました。使い始めの人は、手のひらに伝わる衝撃を個々の刺激として感じます。慣れると、その衝撃を手掛かりにして杖の先にある物の位置や硬さを捉えます。この時、手の感覚は支える側の手掛かりで、杖先の物が注意の中心です。ポランニーは前者を補助的な気づき、後者を焦点的な気づきと呼び、複数の手掛かりから一つの意味へ向かう構造を暗黙的に知る働きとして説明しました。
暗黙知は、秘密にした情報や、まだ文章へ移していないメモとは別の概念です。手順書に書ける内容は明示できますが、実際の行為では、注意の配分、身体の調整、状況に応じた見分けなども使います。ポランニーは、明示的な知識を用いる時にも暗黙的な手掛かりへの依存が残ると考えました。この見方では、暗黙知を全て文章へ変換すれば消えるという前提を避け、説明と実行の間に残る部分を調べます。
手続き的知識と暗黙知には重なる場面があります。自転車に乗る技能には言語化しにくい身体調整が関わるためです。ただし、手続き的知識は課題をどのように実行できるかを中心にし、暗黙的に知るという考えは知覚、言語理解、科学的発見にも及びます。専門家判断では、多数の手掛かりをまとめる速い判断が熟練の成果である場合も、思い込みである場合もあります。言語化の難しさと判断の正確さには、別の評価が必要です。
熟練を共有するには、完成した結論に加え、実演、比較例、判断の途中で注目した手掛かり、結果を残します。料理なら、鍋の音、泡の大きさ、温度、加熱時間を仕上がりと対応させた比較表が有用です。経験者が後から説明した手掛かりは、訓練用の候補になります。その手掛かりが実際に判断へ使われたか、別の人にも役立つかは、実演と結果の記録から調べる課題です。暗黙知の存在を理由に説明や検証を省くと、熟練と偶然を分けにくくなります。
タロットの熟練者が複数のカードから素早く構図を捉える時、人物の向き、色、配置、相談者の言葉などが補助的な手掛かりになり得ます。カードと図像は観察できる事実で、それらを「対立」や「移行」と結ぶ文は占術上の解釈です。まず解釈文を書き、その直後に注目した手掛かりを記すと、感覚的な判断の一部を共有できます。「強く感じた」という経験が示すのは、判断が生じたという事実までです。第三者の内心や将来の出来事に関する主張は、本人の発言や期日後の記録で別に評価します。