神話
キュノスラ
きゅのすら意味
キュノスラは、アラトスの『ファイノメナ』で、後にこぐま座と呼ばれる北天の熊につけられた名です。ヘリケとともに幼いゼウスをクレタで育てたと語られ、フェニキアの航海者が進路を定める星の目印にもなりました。
解説
アラトスは、北の天の軸を囲んで回る二頭の熊をキュノスラとヘリケと呼びます。二頭は、クロノスの目を逃れてクレタの洞窟で育つ幼いゼウスを、一年にわたり養ったという伝承です。この話では、養育者の姿と空を巡る熊の星座が一つに結び付きます。
航海での役割は二頭で異なりました。アカイア人は大きく明るいヘリケを、フェニキア人は北極の近くを小さく回るキュノスラを頼りにします。アラトスが記したのは、星座全体を見て進路を定める古代の航法です。現在は、こぐま座で最も明るく天の北極に近いポラリスが北の目印になります。ただし、歳差運動という地球の自転軸の向きがゆっくり変わる現象があるため、極の位置は長い年月をかけて移ります。
偽ヒュギヌスは、アグラオステネスの説として、キュノスラをゼウスの乳母となったイデ山のニンフの一人に数えました。キュノスラとヘリケの二人を乳母とし、その功績で二頭の熊として空へ置かれたという別伝もあります。キュノスラという名には、ゼウスの養育神話、こぐま座、航海の知識が重なっています。