神話
キュパリッソス
きゅぱりっそす意味
キュパリッソスは、オウィディウスの『変身物語』第10巻で、親しんでいた鹿を誤って死なせ、永遠に嘆くため糸杉へ変わったケオス島の少年です。鹿との日々、事故、アポロの慰め、変身という順序から、糸杉と哀悼の結び付きが語られます。
解説
鹿は野山のニンフたちにささげられた存在で、金色の角や宝石の首飾りを身に着け、人を恐れませんでした。なかでもキュパリッソスになつき、少年は鹿を泉へ連れて行き、角を花で飾り、背に乗って遊びます。こうした日常の描写が、事故後の悲しみの深さを支えています。
夏の昼、木陰で休んでいた鹿をキュパリッソスの投げ槍が誤って貫きます。アポロは悲しみを和らげようとしますが、少年は死を望み、いつまでも嘆ける姿にしてほしいと神々へ願いました。泣き続けた身体は緑色に変わり、髪は梢となって、空へ向かって細く伸びる糸杉になります。
変身を見届けたアポロは、自分が少年を悼むように、糸杉も人々の嘆きに立ち会うと告げました。常緑の木と喪の場が結び付く場面です。後世の版画も、鹿、変身する少年、竪琴を持つアポロを一つの画面に収めています。糸杉が哀悼の木となる物語の中心にいるのは、取り返せない事故を嘆く一人の少年です。この順序をたどると、象徴が成立する過程まで分かります。