哲学・心理

文言伝

ぶんげんでん

意味

文言伝は、六十四卦のうち乾卦と坤卦だけを詳しく解釈する易伝で、十翼の一つです。二卦の卦辞と爻辞にある短い語を、君子の徳、時に応じた行動、天地の働きへ展開します。

解説

乾の章は、卦辞「元亨利貞」の四字を、元は善の長、亨は嘉の会、利は義の和、貞は事の幹と説明し、君子が行う四つの徳へ結び付けます。潜龍から亢龍までの六爻も繰り返し取り上げ、一連の爻辞を地位、時機、進退の観点から読み直します。短い占辞を倫理や政治の言葉へ広げる過程が、乾の章の中心です。

坤の章は、「坤は至柔にして動くや剛、至静にして徳方なり」と述べ、柔順と行動、静けさと方正を一組として論じます。「直方大」など坤の爻辞を取り上げた後、天を承けて時に従う働きへつなげる構成です。文言伝が直接解説する範囲は乾と坤に限られ、残る六十二卦では各卦の彖伝や象伝を参照します。

卦辞と爻辞は経文、文言伝は後から加わった注釈という関係です。そのため、「元亨利貞」を四徳とする説明には、文言伝による解釈だと分かる形で出典を添えます。占筮では乾・坤の経文を先に読み、該当する文言伝の段落を参照して、原文の判断と後世の思想的な展開を分けて記録します。