神話

フルップ樹

ふるっぷじゅ 別名:Huluppu Tree・Halub Tree

意味

フルップ樹は、シュメール語物語『ギルガメシュ、エンキドゥと冥界』の冒頭に登場する木です。ユーフラテス川岸から流された木をイナンナがウルクへ運び、成長後に玉座と寝台の材料にしようと育てます。蛇、アンズー鳥、正確な同定が難しい女性の霊的存在が住みつき、ギルガメシュが蛇を倒すと残る二者も木を離れました。

解説

物語では、ユーフラテス川の岸に生えていた一本のハルブ樹が南風に倒され、川に運ばれます。通りかかったイナンナは木を拾い、ウルクにある自身の神聖な園へ植えました。やがて玉座と寝台を作るため、木が十分に育つ日を待ちます。フルップはハルブというシュメール語の樹木名をもとにした慣用的な表記で、植物の種は確定していません。

五年、十年と木が育つ間に、根元には呪文の効かない蛇が巣を作りました。枝にはアンズー鳥が雛を置き、幹には「キシキル・リルラケ」と記される女性の霊的存在が住みます。古い英訳はこの存在をリリスと呼びましたが、シュメール語の語句と後世のユダヤ伝承に登場するリリスを同一人物とする根拠は十分ではありません。木の三つの場所と、そこに住む三者は原文から確認できる図像的な配置です。

イナンナが太陽神ウトゥへ窮状を訴えても、彼は助けませんでした。次に相談を受けたギルガメシュは、根元の蛇を青銅の斧で倒します。アンズー鳥は雛を連れて山へ移り、幹の女性存在は荒野へ去りました。町の若者たちが枝を払い、木材はイナンナの玉座と寝台に使えるよう渡されます。ギルガメシュは根と枝から、用途の同定が難しい球状の道具と打具を作りました。

フルップ樹の場面は、独立したシュメール語作品の冒頭にあります。アッカド語版『ギルガメシュ叙事詩』第12書板は同作後半の冥界部分を取り入れましたが、樹木を育てて伐る経緯までは収めていません。現代の象徴解釈として、このサイトでは育てた資源が予定通りに使えない状況と、利用できる状態へ変えるために他の住み手を退ける決断を考えます。木を単純な生命の樹、三者を固定した善悪の象徴として説明する読み方は古代本文にありません。