象徴
鉛錫黄
えんしゃくおう意味
鉛錫黄は、鉛と錫を含む化合物を焼成して作る、明るく不透明な歴史的黄色顔料です。十四世紀初めから十八世紀初めのヨーロッパ絵画で使われました。黄色の見た目だけでは決められないため、現在は組成や結晶構造を調べ、似た黄色顔料と区別します。
解説
顔料は、細かな粒子を油や膠などの結合材と混ぜ、表面に色の層を作る材料です。鉛錫黄には、鉛錫酸塩(Pb2SnO4)を主成分とする鉛錫黄Iと、鉛・錫に加えてケイ素を含む鉛錫黄IIという二つの型があります。このI・IIは保存科学で用いる分類で、両者は焼成条件と結晶構造が異なります。型を色名や肉眼の黄色から決めることはできません。X線回折のように結晶構造を読む分析が、型を見分ける手掛かりになります。
ナポリイエローは、歴史的な材料であれば鉛アンチモン酸塩を主成分とする別の黄色顔料です。マシコットは、黄色の一酸化鉛を指すことが多い一方、古い記録では鉛錫黄を指す場合もあります。さらに、イタリア語のgiallorinoのように複数の黄色顔料へ使われた名称もあります。したがって、作品の制作時期、画材の記録、分析結果を重ね、黄色の顔料名を材料名だと早合点しないことが大切です。
鉛錫黄は、衣服、光の当たる面、金に近い明るい色を作るために他の色材と混ぜて用いられました。米国ナショナル・ギャラリーのフェルメール研究では、二つの型の鉛錫黄、黄土、黄色レーキを使い分けた例が示されています。別の作品調査では、レモンの黄色を蛍光X線分析で鉛錫黄と判定しました。蛍光X線分析は含まれる元素を読む方法です。顔料の候補を絞るには、断面の観察、結合材、制作年代なども照らし合わせます。
油絵具の層では、鉛を含む顔料と油の結合材が反応し、鉛石鹸という化合物ができる場合があります。米国ナショナル・ギャラリーは、表面の凹凸、透明化、色の弱まりにつながった事例を報告しています。これはすべての鉛錫黄の層に同じ変化が起こるという意味ではありません。保存状態を判断する時は、画面の変化、層の構造、分析結果を合わせて専門家が検討します。
鉛錫黄は鉛を含むため、古い粉末、剥離片、研磨くずを個人で砕いたり、焼成して復元したりする材料ではありません。作品や画材の安全情報は、製品のSDSと保存修復の専門家の判断を確かめます。占いや創作でこの黄色を光、価値、目を向ける場所の比喩として読むことは、絵画で明るい面を作る働きから広げた現代の解釈です。顔料の組成や作品分析の事実とは分けて考えます。