象徴
ナポリイエロー
なぽりいえろー意味
ナポリイエローは、歴史的な意味では鉛アンチモン酸塩(Pb2Sb2O7)を主成分とする不透明な黄色顔料です。現代の絵具名では、その色調を再現する別組成の混合色を示す場合があるため、名称だけで鉛アンチモン酸塩とは決められません。
解説
鉛アンチモン酸塩は、鉛、アンチモン、酸素を含む化合物です。歴史的なナポリイエローは、この化合物を焼成して作る合成顔料で、純度や加熱の条件によってレモン色から黄橙色まで幅が生じます。ボストン美術館の保存科学データベースCAMEOは、ガラス、陶器の釉薬、絵画に使われてきた黄色の色材として整理しています。色名にナポリとあっても、ヴェスヴィオ火山の鉱物をそのまま砕いた天然顔料だと裏付ける資料はありません。
鉛アンチモン酸塩を黄色や不透明化の材料として使った例は、古代のガラスや陶器にも確認されています。西ヨーロッパの絵画では十七世紀から使用例があり、十八世紀後半から十九世紀半ばに広く使われました。ロンドン・ナショナル・ギャラリーの十八世紀の作品調査では、少女の服の鮮やかな黄緑寄りの部分に純粋なナポリイエローがあり、淡い部分には鉛白が混ぜられていました。顔料の純度、別の顔料との混合、塗り重ねの順序が、画面の黄色を変えます。
ナポリイエローと鉛錫黄は、どちらも鉛を含む黄色顔料ですが、中心となる化合物が異なります。鉛錫黄は鉛と錫を含み、ヨーロッパ絵画では十四世紀から十八世紀初めに多く使われました。ナポリイエローはその後に利用が増えます。ただし古い記録の giallorino や giallolino には複数の黄色材料を指す用法があり、名称だけから二つを分けることはできません。
作品調査では、黄色に鉛とアンチモンがあることがナポリイエローの候補になります。蛍光X線分析は元素を調べる方法です。その結果へ、粒子の観察、結晶構造を調べるX線回折、制作年代、顔料層の位置を重ねると、黄色の材料を絞り込めます。鉄の混入で橙色や桃色へ寄る例もあるため、色だけを出発点にしません。
二十世紀以降は、鉛アンチモン酸塩を含まない混合色にもナポリイエローという販売名が使われています。Gettyの美術・建築用語集は、カドミウムイエロー、亜鉛白、黄土、ベネチアンレッドなどを混ぜた代替色へ同じ語が使われると説明しており、画材を選ぶ時は、色名に加えて容器に記された顔料番号、成分表示、SDSを確かめます。
歴史的なナポリイエローは鉛を含むため、古い粉末や塗膜を削る、砕く、加熱する作業には向きません。CDCは、鉛を含む顔料を混ぜたり塗ったりする作業が曝露源になり得ると示しています。古い作品や材料の処置は、保存修復と安全管理の専門家へ委ねます。
占いや創作でナポリイエローを取り上げるなら、同じ黄色でも材料、混合、層の順序で働きが変わることから、明るい印象の背景にある条件を確かめるという連想を置けます。これは画材史と画面の見え方から広げた表現上の読みです。顔料の成分や安全性を示す事実とは別にします。