象徴
スマルト
すまると意味
スマルトは、コバルト酸化物で青く着色したカリガラスを粗く砕いて作る歴史的な青色顔料です。ガラス粉末の粒子で色を作るため、コバルトブルーやウルトラマリンとは組成が異なり、油彩では灰色から灰褐色へ変わる例があります。
解説
カリガラスは、シリカにカリウムを含む原料を加えて作るガラスです。スマルトでは、このガラスにコバルト酸化物を溶かし込み、青く着色した塊を砕いて顔料にします。粉末はガラス質の粒子なので、同じコバルトを含むコバルトブルーのような結晶性の顔料とは、成分も光の通り方も異なります。
中国の壁画にはスマルトを使った例があります。ヨーロッパでは十五世紀以後に絵画へ広がり、十六世紀から十七世紀には青い空や衣服を描く層に多用された青色顔料です。黒や黄色の顔料と混ぜれば、緑や鈍い青も作れます。青色が見えても、スマルトを単独で塗った層なのか、混色なのか、下層なのかは作品ごとに調べる必要があります。
ガラスの粒子が粗いスマルトは、強く下を隠す顔料ではありません。粒子の大きさ、結合材、塗膜の厚み、白との混合は、青の明るさと透明感を変えます。画面が淡い灰色に見える場合も、最初から淡い等級のスマルトを選んだのか、後から色が変わったのかを見分けなければなりません。
油彩で青を失う背景には、スマルトからカリウムやコバルトが移動し、塗膜内に石けん状の化合物が生じる過程などがあります。湿気、結合材、顔料の混合によって、変化の現れ方は一様ではありません。ロンドン・ナショナル・ギャラリーが公開するのは、空に使われたスマルトが緑がかった灰色へ変わった作品の一例です。
材料調査では、蛍光X線分析でコバルト、カリウム、ケイ素、場合によってはヒ素を確認し、ラマン分光、断面観察、制作記録を組み合わせます。蛍光X線分析は元素の情報を示しますが、コバルトだけではスマルトとコバルトブルーを分けられません。ガラス質の粒子と結合材の状態まで確かめて、候補の確度を高めます。
粉にしたガラスから青を得る工程を、占いや創作では、材料を変えて見え方を作り直す比喩にできます。これは画材の製法と保存状態から広げる表現上の読みです。青色顔料が変化を約束するという意味にはしません。