象徴

墨

すみ

意味

墨は、油や松を燃やして集めた煤を、膠で固めた固形墨、またはそれを水で磨って作る黒色の書画材料です。油煙墨と松煙墨では煤を取る材料が異なり、黒の色味にも幅があります。

解説

煤は、有機物が十分な酸素を得ずに燃えた時に生じる細かな炭素粒子です。膠は、動物の皮や骨などから得るたんぱく質系の接着材を指します。固形墨は煤と膠を練って形にし、使う時には水を加えて硯で磨り、紙や絹の上へ黒い線や面を作ります。

油煙墨は、菜種油やごま油などを燃やして集めた煤から作る墨です。松煙墨は松材を燃やした煤を使い、前者は深い黒、後者は青みを帯びた黒として説明されることがあります。ただし、実際の見え方には煤の粒子、膠の量、水、紙や絹の吸い込み方も関わります。

墨の濃淡は、墨と水の比率だけで決まりません。筆に含ませる液量、紙や絹の繊維、にじみ止めの有無、重ねる順序が、乾いた後の輪郭と灰色の階調を変えます。一色の材料でも、線を際立たせる場合と、薄く層を重ねて空気感を作る場合では、役割が異なります。

文化財の墨を調べる時は、黒く見えることだけを根拠に煤の由来を決めません。ラマン分光は、光を当てた時の散乱から炭素材料の特徴を読む方法で、東京文化財研究所は墨を非破壊で分析できる手法の一つとして紹介しています。繊維、膠、ほかの黒色材料、制作記録を合わせて見ると、材料名の確度を高められます。

占いや創作で墨を読むなら、記録を残すための黒、余白と対照になる黒という使われ方から、何を言葉にし、何をまだ書かないかを考える比喩にできます。これは書画の材料と技法から広げる表現上の読みです。墨の成分が知性や出来事を決める、という意味にはしません。