哲学・心理

大母元型

たいぼげんけい

意味

大母元型は、ユング派の分析心理学で、命を育み守る母の姿と、相手をのみ込み自由を奪う母の姿を結び付ける、心の基本的な型です。神話や夢に現れる母性的なイメージを理解するための概念です。

解説

ユング心理学では、さまざまなイメージの背後に共通する心の型を「元型」と呼びます。ユングの研究を受け継いだエーリッヒ・ノイマンは、著書『グレート・マザー』で、神話や美術に表れた母のイメージを比較しました。特定の女神像と、その像を通して表れると考えた心の型を分けて論じています。

ノイマンが重視した象徴の一つが、器です。中に物を入れて保つ器の性質を、命を包み育てる母のイメージに重ねました。一方、ユング派の母のイメージには、保護する相手を自分のもとにとどめ、独立を妨げる面もあります。養育と束縛の両面に目を向けるため、母性的な象徴を優しさだけで説明する時とは解釈が変わります。

この象徴上の区分と、現実の女性や母親の性格は別の問題です。個人の経験に近づく時は、母親にまつわる記憶と感情のまとまりを指す「母親コンプレックス」とも区別します。たとえば夢やカードから保護を連想したなら、誰のどの支えを思い出したのか、自分で決める余地も保たれているかを考えられるでしょう。これは日常を振り返るための応用であり、夢やカードだけで親子関係を診断することはできません。