神話
パエトンの墜落
ぱえとんのついらく意味
パエトンの墜落は、太陽神の子である証明を求めた青年が父の戦車を借り、馬を制御できないまま天地を焼き、ユピテル(ゼウス)の雷で撃ち落とされる神話図像です。四頭の馬、壊れる戦車、雷光、逆さに落ちる青年、黄道の星座が、宇宙規模の混乱を示します。
解説
オウィディウス『変身物語』では、パエトンが親子関係の証しを求め、太陽神は望みを一つかなえると誓います。パエトンが選んだのは一日だけ太陽戦車を御すことでした。父は、牡牛、獅子、蠍などの星座を通る険しい道と、天にも地にも寄りすぎない進路を説きます。それでも青年は戦車を望みます。
走り出した馬は御者の軽さに気づいて道を外れ、戦車は高低を乱しました。地上が焼け、川が干上がるなか、ユピテルは被害を止めるため雷を放ちます。戦車は砕け、パエトンはエリダノス川へ落下しました。ここまでが物語上の出来事で、自分の力への過信や節度の欠如という教訓は、後世に強調された解釈です。
ルーベンスの《パエトンの墜落》では、四頭の馬と青年に加え、時や季節を表す蝶の翼をもつ女性像、円弧状の星座帯が一緒に崩れます。一般の黄道帯図は天体の位置関係を示す図です。ルーベンスは星座帯を、乱された天の運行を伝える背景へ組み替えました。パエトンを見分ける決め手は、戦車、馬、雷、地上の火災です。羽と蝋を失って海へ落ちる若者はイカロスに当たります。