神話

ナルキッソスの水鏡

なるきっそすのみずかがみ

意味

ナルキッソスの水鏡は、泉に映った自分の姿を別の相手だと思い、その像へ恋をする青年を描いた神話画の主題です。「水鏡」とは、波立たずに像を映す水面のことです。

解説

オウィディウスの『変身物語』では、ナルキッソスは多くの求愛を退け、森のニンフであるエコーも拒みます。拒まれた者の一人が、彼も報われない恋に苦しむよう願うと、報復を司る女神ネメシスがその願いを聞き入れました。狩りで疲れたナルキッソスは、動物や落ち葉にも乱されていない泉へ近づき、そこで初めて自分の姿が水面に映っていることに気づきます。

ナルキッソスは水面の像を実在する相手だと思い、触れようとしても抱きしめられないことに苦しみます。やがて像の正体が自分だと悟りますが、そこから離れられず、衰弱して死にました。物語の終わりでは、彼の身体があった場所に水仙の花が残ります。

美術では、水辺へ身をかがめる青年、水面の反射、少し離れて見守るエコー、水仙などが場面を見分ける手がかりです。作品によっては、狩りをする姿と泉をのぞく姿が同じ画面に描かれます。この神話は一方的な欲望や自己認識を考える材料になりますが、現代の「ナルシシズム」や人格障害の診断とは区別する必要があります。