哲学・心理

社会的望ましさバイアス

しゃかいてきのぞましさばいあす 別名:social desirability bias・socially desirable responding・社会的望ましさ反応

意味

社会的望ましさバイアスとは、質問への回答で、実際の行動や気持ちをそのまま報告する代わりに、周囲から好ましく受け取られる方向を選ぶことで生じる測定の偏りです。承認される行動の過大報告と、批判される行動の過少報告の両方を含みます。

解説

クラウンとマーロウは一九六〇年、文化的には望ましいものの、誰もが常に実行するとは考えにくい行動を含む三十三項目の尺度を作りました。この尺度は、性格検査で好ましい自己像を示す回答傾向を測る試みです。尺度得点が示すのは全体的な回答傾向であり、個々の回答の真偽を特定するには別の基準が要ります。社会的望ましさバイアスを調べる際は、回答と行動記録を比べるか、回答条件を変えた実験を用います。

ポールハスは一九八四年、社会的に望ましい回答を、本人も肯定的な自己像を信じる自己欺瞞と、他者へ良い印象を示そうとする印象管理に分けました。既存尺度の因子分析では、この二要素に対応するまとまりが得られています。匿名条件と公開条件を比べると、印象管理との関係が強い尺度は公開条件で得点が上がりました。本人が自覚して回答を変えた場合と、自己理解そのものが肯定的な場合では、同じ高得点でも仕組みが異なります。

トゥランジョーとヤンは二〇〇七年、薬物使用、性行動、投票など敏感な質問に関する調査研究を整理しました。誤報告は多くの場合に状況依存で、本人に開示をためらう情報があるか、調査方法がどの程度プライバシーを守るかによって変わります。フィッシャーの三研究では、自分について直接尋ねる方法と、他者について答える間接質問を比較しました。間接質問は社会的影響を受けやすい項目で望ましい方向への偏りを減らし、中立的な項目の回答差は小さい結果でした。ただし、他者への推測が本人の行動を正確に表す保証はないため、間接質問は目的に合う場面を選びます。

占いの相談で家族、金銭、健康などを尋ねる時は、評価を含まない語を使い、回答しない選択肢を先に示します。匿名で集計できる調査なら個人を特定する情報を外し、匿名性を確保できない面談では記録の用途と閲覧者を具体的に伝えます。多元的無知は私的態度と推測された集団規範のずれ、透明性の錯覚は内面が他者に見抜かれているという過大評価、偽の合意効果は自分と同じ回答をする人の割合の過大評価です。社会的望ましさバイアスでは、回答が受け手からの評価を意識した方向へ動いたかを調べます。