神話

ミュラ

みゅら

意味

ミュラは、オウィディウスの『変身物語』第10巻で、父キニュラスとの間にアドニスを身ごもり、追跡から逃れた後に没薬の木へ変わる王女です。乳母が身元を隠して父の寝室へ導いたこと、父が真相を知って剣を取ったこと、逃亡、変身、樹皮からの出産が一続きに語られます。

解説

物語は、ミュラが父への欲望を禁じられたものと理解し、拒もうと苦しむ場面から始まります。父から結婚相手を尋ねられても本心を明かせず、やがて命を絶とうとしました。その直前に乳母が止め、事情を聞いた後、身元を伏せたままミュラをキニュラスに会わせると約束します。

母ケンクレイスが、既婚女性が九夜にわたり夫婦の接触を避けるケレス祭へ参加している間、乳母は酒に酔ったキニュラスへ、ミュラと同じ年頃の娘が会いたがっていると告げました。暗闇の中で会うことが何夜か続いた後、キニュラスは灯りを持ち込み、相手が娘だと知ります。剣を取った父から逃れたミュラは、アドニスを身ごもったまま九か月各地をさまよいました。

出産を前にしたミュラは、生者にも死者にも居場所がないとして、どちらにも属さない姿に変えてほしいと神々へ願います。身体は根、幹、枝、樹皮へ変わり、涙は幹から落ちる没薬になりました。木の中で育った子は、出産を助ける女神ルキナの力で裂けた樹皮から生まれ、ニンフたちに迎えられます。この結末は、香料となる樹脂に涙と母子の物語を与える神話であり、没薬という植物の実際の起源を説明するものではありません。