神話

イナンナの冥界下り

いなんなのめいかいくだり 別名:Inanna Descent・Inanna Descent to the Netherworld

意味

イナンナの冥界下りは、シュメール語で伝わる物語で、女神イナンナが姉エレシュキガルの治める冥界へ入り、死から戻るまでを描きます。七つの門で権威を示す装身具を一つずつ外され、冥界の裁きで命を失いました。知恵の神エンキの助けで蘇生しますが、地上へ帰るには身代わりを差し出さなければなりません。

解説

物語の冒頭は、イナンナが「大いなる天」から「大いなる下」へ心を向け、神殿と地上の役職を後にする決意を伝えます。門番ネティには、姉の夫グガランナの葬儀に参列するためだと説明しました。一方、冥界へ持ち込んだ七つの神的な力や、姉を王座から立たせて自ら座る行動は、権限を広げようとする意図も示します。本文は葬儀への参列と冥界の力への欲求を並べており、下った理由を一つには定めていません。

出発前のイナンナは、側近ニンシュブルに救援手順を託します。冥界の七つの門では、門番が冠、首飾り、胸飾り、金の輪、測量具、衣を順に外しました。彼女は門ごとに理由を尋ねますが、冥界の規則に口答えしてはならないと告げられます。最後にイナンナがエレシュキガルの王座へ座ると、七柱の裁判神アヌンナが死の判決を下し、遺体を鉤へ掛けました。

三日三晩の後、ニンシュブルは命令通りエンリル、ナンナ、エンキへ助けを求めます。前の二神は冥界の力を欲した結果だとして拒みましたが、エンキは二人の使者を造り、命を与える植物と水を持たせました。使者がエレシュキガルの苦しみに応じて遺体を受け取り、イナンナは蘇生します。冥界から戻る者には身代わりが必要だという規則があり、悪霊たちはイナンナに代わる者を要求しました。

帰還後、イナンナは自分を悼んだニンシュブルらを悪霊から守ります。立派な衣で王座にいた夫ドゥムジを見つけると、彼を身代わりとして引き渡しました。終盤には欠損がありますが、残存箇所にはドゥムジと姉が半年ずつ冥界に入る結末が記されています。前1千年紀のアッカド語作品『イシュタルの冥界下り』にも七つの門と装身具の除去がある一方、救出の展開や地上への影響は異なる別作品です。現代の象徴解釈として、このサイトでは権威を持ち込めない場所で失うものと、帰還の代価を誰に負わせるかを考える題材とします。