神話

エウロペの略奪

えうろぺのりゃくだつ 別名:Abduction of Europa・Rape of Europa・エウロペの誘拐

意味

エウロペの略奪は、ゼウスが牡牛に姿を変え、フェニキアの王女エウロペを海越しにクレタへ連れ去る神話場面です。白い牡牛、牡牛に乗る王女、岸に残る侍女、海が物語を見分ける手がかりになります。「略奪」は、変身で警戒を解いた神が王女を誘拐する出来事を示す題名です。後世に恋愛場面として美化された構図でも、物語の中心には強制的な連れ去りがあります。

解説

オウィディウスの『変身物語』第2巻では、ゼウスのローマ名であるユピテルが、白く穏やかな牡牛へ姿を変えます。エウロペは最初こそ警戒しますが、やがて花を与え、角へ花輪を掛け、牡牛の背に乗りました。牡牛は従順に見せて王女を安心させたため、花輪と侍女が描かれていれば、海へ出る前の場面と判断できます。

物語は、牡牛がエウロペを岸から運び去り、海を渡ってクレタへ着くところへ進みます。海上の場面では、王女が角につかまり、故郷の岸を振り返る姿が中心です。岸で合図を返す侍女、風を受ける布、牡牛を追うクピドやイルカは、後世の作品で加えられた識別要素になります。

画家は同じ物語から異なる瞬間を選びました。ロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵するヴェロネーゼ作品は、侍女が王女を牡牛へ乗せる出発前の場面です。ティツィアーノの作品は、すでに海へ運ばれたエウロペが角につかまり、岸の仲間へ助けを求める場面を描いています。題名を決めるには、牡牛と女性に加え、海、花輪、侍女の位置を照らして物語の段階を判別します。

英語題の「Rape of Europa」や日本語の「略奪」は、王女が強制的に連れ去られたことを含む題名です。イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館は、この物語を誘拐と、その後の性暴力を伴うものとして説明しています。牧歌的な風景や優美な人物表現にも、誘拐した神と連れ去られた王女の力関係が表れています。占術や象徴解釈へ結び付けるなら、作品から確認できる物語と後世の連想を分けることが大切です。