神話
ダナエと黄金の雨
だなえとおうごんのあめ意味
ダナエと黄金の雨は、父に幽閉された王女ダナエのもとへ、ゼウス(ローマ名ユピテル)が金の流れへ姿を変えて入り、のちの英雄ペルセウスを身ごもらせる神話図像です。寝台の女性、上から降る金色の粒や光、金貨を布で受ける侍女が主題を見分ける手がかりになります。
解説
アポロドーロスの『ビブリオテーケー』では、父アクリシオスが「孫に殺される」という神託を恐れ、ダナエを青銅の部屋へ閉じ込めます。そこへゼウスが屋根を通る金の流れとなって入り、ダナエはペルセウスを産みました。父は母子を箱に入れて海へ流し、物語はペルセウスの生い立ちへ続きます。
ティツィアーノの《黄金の雨を受けるダナエ》は、寝台に横たわるダナエと、降り注ぐ金を前掛けで受ける老女を描きました。古典本文の「金の流れ」が画面では金色の粒や金貨となり、雲間の光と侍女の動作によって、神の到来が目に見える形へ置き換えられています。
金貨を集める侍女は、欲望や富をめぐる寓意を読み込む契機にもなりました。これは後世の受容に属する意味です。古典本文ではダナエの意思や受け止め方が詳しく示されないため、親密な裸体表現だけを根拠に同意を決めつけると、絵画の演出を物語上の事実へ取り違えます。