哲学・心理
保有効果
ほゆうこうか 別名:endowment effect・所有効果・賦与効果意味
保有効果とは、同じ物でも、自分が所有した後は手放すために求める金額が、未所有の状態で取得するために払う金額を上回りやすい傾向です。所有の割り当てによって評価が変わる点に焦点があります。
解説
セイラーは一九八〇年、所有物を手放す時の評価が取得時の評価と食い違う現象に、保有効果という名前を与えました。一九九〇年の市場実験では、参加者の半数へ消費財のマグカップを無作為に渡し、所有者と未所有者に価格を付けてもらっています。理論上は評価の低い所有者から評価の高い未所有者へ取引が進むはずでしたが、実際の取引数は予測を下回りました。実験で換金額を指定したトークンでは予測に近い取引が成立し、消費財を持つ条件との差が示されています。
受取意思額、英語でWTAとは、持っている物を手放すために受け取りたい最低額です。支払意思額、英語でWTPは、持っていない物を得るために払える最高額を指します。同じ物についてWTAがWTPを上回る時、所有を境にした評価差が見えます。損失回避は、参照点からの損失を同程度の利得より重く感じる広い傾向で、保有効果を説明する有力な考え方です。後続研究では、所有そのものが対象への評価を押し上げる仕組みも報告され、複数の説明が検討されています。
保有効果の大きさは、物の種類と実験手続きに左右されます。二〇〇五年の実験では、匿名性、価格回答の仕組み、練習と理解確認をまとめて整えた結果、マグカップとくじのWTAとWTPは同程度になりました。後のレビューも、実験室での頑健性と現実場面への適用をめぐる研究の違いを整理しています。所有の効果を判断する時は、一度の価格差に加え、取引費用、代替品、質問への理解、参照点を同時に調べます。現状維持バイアスは現在の選択肢を続ける傾向、埋没費用は回収できない過去の支出が将来判断へ残る問題です。
今の仕事、契約、道具を手放すか考える時は、最初に継続の利益と費用を記録します。次に「現在持っていない状態なら、同じ条件で新しく選ぶか」を検討し、選ぶ場合の上限金額や受け入れられる条件を置きます。手放すために必要な条件と、新しく得るために払える条件の差には、解約費用や再取得の難しさも影響するでしょう。カードが示す愛着や不安は解釈欄へ置き、契約期間、金額、代替案、戻れる条件は事実欄へ分けます。保有効果という観点は、すでに持つことが評価へ加えた分を見直す手掛かりです。