哲学・心理
現状維持バイアス
げんじょういじばいあす 別名:status quo bias・status-quo bias・現状維持効果意味
現状維持バイアスとは、選択肢の内容が同じでも、現在の状態や初期設定として示された案を選び続けやすくなる傾向です。継続には切替費用や実用上の利点もあるため、偏りの判定には、基準状態の設定が選択率をどれほど動かしたかという比較が必要です。
解説
サミュエルソンとゼックハウザーは一九八八年、投資配分、契約、公共政策などを選ぶ質問票で、選択肢の一つを現状として示す版と、全案を同列に示す版を比べました。投資の設問には中立版と、四案それぞれを現状に置く版があり、同じ案でも現状に設定されると選ばれる割合が上がる結果でした。健康保険と退職年金の実データでも、既加入者が以前の案に留まりやすい傾向が報告されています。質問票は仮想選択で報酬を伴わないため、現実の切替行動へ広げる際には追加証拠が必要です。
二〇二一年の事前登録追試は、米国の参加者三百十一人と三百十六人を対象に、元研究の四場面を再検討しました。予算配分、投資、大学の職務選択では現状維持効果が支持されましたが、ワゴンの色を選ぶ場面では支持が弱い結果でした。同じ形式の質問でも、対象や選択肢によって効果の大きさが変わることを示します。各案が中立版と現状版でどの程度選ばれたかを比べると、場面の好みと基準状態の影響を分けやすくなります。
ブルーメンストックらは二〇一八年、アフガニスタンの従業員を給与連動の貯蓄口座へ無作為に割り当て、初期設定の効果を調べました。自動加入にした条件の参加率は、自分で加入を選ぶ条件より四〇ポイント高く、五〇%の奨励金と同程度の効果量でした。著者らは、将来へ先送りしやすい選好と、貯蓄案を比較する認知的な負担が主な説明になると結論づけています。初期設定は現状を作る一方、推奨の合図としても受け取られるため、現状維持バイアスと初期設定効果を完全に同一視しない区別が必要です。
占いで仕事、契約、関係の継続を考える時は、現在案と変更案を、毎月の費用、時間、得られる利益、取り消しやすさという同じ項目で比べます。切替作業や既存の支援体制は現在案の実際の利点として記録に残します。保有効果が対象とするのは、所有前後に生じる評価差です。損失回避では、参照点からの損失を同程度の利得より重く受け取ることが焦点となります。選択アーキテクチャは、案の並べ方や初期設定を含む選択環境全体を指します。