哲学・心理
正常性バイアス
せいじょうせいばいあす 別名:normalcy bias・normality bias・正常化バイアス・正常化の偏見意味
正常性バイアスとは、災害の警報や異常の手掛かりを受けても、状況を普段の延長として解釈し、危険の評価や防護行動が遅れると説明する概念です。避難の遅れには、警報の受信と理解、周囲の反応、過去経験、移動上の制約も重なるため、行動を一つの心理傾向に帰着させない姿勢が必要です。
解説
ミレティとオブライエンは一九九二年、ロマ・プリータ地震後の余震警報に対する住民の認知と行動を、サンタクルーズ郡とサンフランシスコ郡の世帯調査で比べました。本震の被害を受けなかった人では、状況を平常の範囲へ収める「正常化」が余震の危険認知と防護行動を抑えていました。一方、警報情報の質と量は危険認知や対応と正の関係を示しています。この研究が直接捉えたのは、特定の地震後に出された余震警報への反応です。
矢守克也は二〇〇九年、正常性バイアスという説明の理論的な妥当性を再検討しました。災害情報を受けた時点で強い偏りが一律に生じるという見方に対し、緊急事態を理解しようとする事後の意味付けから、バイアスという説明自体が作られる面を指摘しています。避難しなかった人を心理傾向で一括りにすると、情報の伝わり方や周囲との相互作用が見えにくくなるためです。正常性バイアスは遅れを考える入口に置き、個々の行動原因は別途調べます。
リンデルとペリーの防護行動意思決定モデルは、警報を受けてから行動するまでを複数の段階に分けます。最初の段階は、警報の受信、注意、内容の理解です。その後、脅威の大きさ、避難などの防護行動、情報を出した組織への評価が組み合わさり、行動の選択へ進みます。移動手段、家族や支援が必要な人、時間は、実行を助けたり妨げたりする条件です。危険の過小評価だけに原因を絞ると、これらの条件を変える対策が抜け落ちます。
災害への備えでは、避難先、移動手段、同行者、行動を始める警戒レベルを平常時に決めて記録します。警報を受けた時の判断は、自治体の避難情報と現地の危険を基準にし、占い結果は安全判断の根拠から外します。楽観バイアスは自分が被害を受ける可能性を低く見積もる傾向、利用可能性ヒューリスティックは思い出しやすい事例が頻度判断を動かす仕組みです。ゼロリスクバイアスでは、一つの危険を完全に消す選択が過大に評価されます。