哲学・心理
ゼロリスクバイアス
ぜろりすくばいあす 別名:zero-risk bias・zero risk bias・ゼロリスク効果意味
ゼロリスクバイアスとは、一つの危険を完全に除く案を、全体の予想被害をさらに大きく減らす案より優先しやすい傾向です。完全除去に固有の利益もあり得るため、同じ費用と範囲で残る危険と減少量を比べた時に、総合的な効果が小さい案を選ぶかどうかが判断の軸になります。
解説
バロン、ゴウダ、クンルーサーは一九九三年、議員、裁判官、企業幹部、環境活動家、経済学者へ、有害廃棄物の処理に関する質問票を送りました。ある設問は、年間のがん症例が八件と四件ある二地点について、両方を部分的に減らす案と、小さい側をゼロにする案を比べる構成です。ゼロにする案は合計五件の削減、ほかの二案は合計六件の削減でしたが、回答者の四二%がゼロ案を少なくとも一つの六件削減案より上に置く結果となりました。抽象化された仮想場面で得た回答であり、実際の政策選択を直接測った結果と区別して読む必要があります。
リトフらは同じ一九九三年、低確率の危険を一つまたは二つ示し、表現の違いが評価へ及ぼす影響を調べました。現状からの改善として示した条件では、同じ合計削減量なら二つの危険を均等に減らす案が選ばれやすく、一つをゼロにできる時だけ選好が変わりました。別の実験では、危険の数値をゼロにしても発生源が残ると、完全除去へ置く価値が下がる結果でした。ゼロという数値だけで決まる効果という見方を越え、参照点、表現、発生源の認識が関わることを示しています。
ヴィスクージらは一九八七年、千五百人を超える消費者を対象に、殺虫剤と便器洗浄剤に伴う複数の健康リスクを金額で評価してもらいました。危険が大きく減るほど評価額は増えましたが、削減量が増えるほど一単位当たりの上乗せは小さくなる傾向がありました。一つの危険を完全に除く条件には追加の支払意思が表れた一方、複数の危険を同時に除く条件でさらに追加される確実性プレミアムの強い証拠は得られないという結果です。完全除去への選好は、削減する対象の数や基準となる危険水準にも左右されます。
占いで完全な安全を求めたくなった時は、案ごとに減る予想被害、残る危険、費用、実行期間、副作用を同じ単位で並べます。発生源の撤去、監視費用の終了、再発経路の遮断が伴うなら、それらはゼロ案に固有の利益です。曖昧性効果は確率を判断する情報の不足、正常性バイアスは警報後の危険評価や行動の遅れ、擬似確実性効果は多段階選択の一部で生じる条件付きの確実性に焦点があります。ゼロリスクバイアスでは、限られた資源で減らせる被害の総量と、特定の危険を完全に除く価値の釣り合いを調べます。