哲学・心理
色順応
いろじゅんのう 別名:chromatic adaptation・カラーアダプテーション意味
色順応とは、照明の分光分布などが変わった時に、視覚系が色刺激への応答を調整する過程です。この補償はおおむね働くものの完全とは限らず、同じ物体でも観察直後と順応後で色の見え方が変わります。
解説
国際照明委員会、略称CIEは、色順応を、刺激の色の変化、特に照明の変化を視覚系がおおよそ補償する過程と定義しています。その上位概念である視覚順応には、現在または直前に見た刺激の明るさ、分光分布、視野内の広がりによって、視覚系の状態が変わることも入ります。白い紙を電球色の照明へ移した直後に黄みを感じ、その場で見続けるうちに白らしさが戻る経験は、この時間的な調整を考える手掛かりです。
ロバート・ハントは一九五〇年、観察者の順応状態を装置で変え、照明Aと照明Bの下で色の見え方を調べました。順応状態に応じて色相と飽和の見え方が変わり、照明を切り替えた後の順応と回復には時間経過があると報告しています。CIEは、順応後に基準とした白が白く見えない状態を不完全順応と呼び、画面や紙面が過度に黄または青く感じられる例を挙げています。結果は照明と観察条件ごとにずれるため、順応時間だけで同じ見え方を予測するのは難しい仕組みです。
異なる照明下でも同じ外観に見える二つの色を対応色と呼びます。CIE 109は、照明と明るさの条件が変わった時の対応色を予測する方法をまとめました。ただし、報告書のモデルは当時のCIE勧告という位置付けを持たず、適用範囲をさらに検証する段階と明記されています。ハントも一九九八年の検討で、照明変化への補償は大きい一方、物体色の見え方が保たれる度合いは近似的だと論じました。色順応は色恒常性に寄与します。色恒常性は照明変化の中で物体色を比較的安定して捉える現象を指し、色順応という調整過程とは役割が異なります。
カードや作品の色を比べる時は、光源、観察開始からの時間、背景、画面か紙かを先に記録します。色順応は観察者側の調整過程、光源色は光を発する部分の色、物体色は反射や透過を経て知覚される表面の色という区別です。残像は刺激が消えた後にも像や色が残る現象を指します。照明への補償と刺激後に残る像を分ければ、図像上の色と観察条件が別々の根拠として残ります。