哲学・心理
秘教
ひきょう 別名:esotericism・Western esotericism・西洋秘教・エソテリシズム意味
秘教は、内側の教えや、限られた参加者に段階を追って伝える知識・実践を指す語です。研究上の「西洋秘教」は、錬金術、占星術、儀礼魔術、薔薇十字思想などを歴史的に研究するための分類です。
解説
「秘教的」を意味する esoteric は、外部へ広く示す exoteric と対にして使われてきました。入門儀礼を経た人だけが学ぶ教え、理解の段階に応じて開示する知識、象徴を通して伝える実践などが秘教と呼ばれます。秘密の保持は多くの伝統に見られる特徴の一つです。一方、組織、教義、知識を伝える方法は伝統ごとに異なります。
学術分野としての西洋秘教研究は、古代末期から現代までに現れた思想と実践を歴史的に調べます。その対象は、錬金術、占星術、儀礼魔術、キリスト教神秘思想、薔薇十字思想、フリーメイソン、近代オカルティズムなどです。比較的新しい研究分野であり、何を秘教に数えるか、「西洋」という境界をどこに置くかについても議論が続いています。
カバラとの関係では、ユダヤ教の思想と、それを異なる目的で受容したキリスト教カバラや近代のヘルメス主義的カバラの区別が出発点です。名称や生命の樹の図が似ていても、成立した時代、用いた言語、宗教上の目的はそれぞれ異なります。そのため、資料を比べる時は、どの伝統を、誰が、いつ、どの目的で受け継いだのかをたどります。
タロットは15世紀のイタリアで遊戯用カードとして確認されます。古代の秘密教義を記した書物だという説や、カバラ、占星術、儀礼魔術との体系的な対応は、18世紀後半以降の著者や19世紀のオカルティズム団体によって発展しました。ウェイトの20世紀初頭の解説も、この秘教的な受容史に属します。カードに人物や記号が描かれていることは図像上の事実で、その図像を特定の秘教体系へ対応させる文は後代の解釈です。
辞典や占術書で「秘教的な意味」と書く時は、参照した著者、デッキ、団体、年代を添えると意味を特定できます。ライダー・ウェイト・スミス版の対応は、19世紀から20世紀初頭の受容史に位置付きます。それをマルセイユ版や15世紀のカードへ適用する文は、後代の体系による読みです。観察できる図像、著者が記した対応、その対応を用いた占術上の読みを順に分けると、歴史上の事実と現在の実践の関係が明確になります。