哲学・心理
著者意図
ちょしゃいと 別名:authorial intention・作者意図意味
著者意図は、著者がある表現によって伝えようとした意味や、作品で達成しようとした目的です。本文の語句と構成、同時代の言語、草稿や書簡などから推定し、作品に明示された内容と著者の内面についての推測を分けます。
解説
著者意図を調べる第一歩は、誰が、いつ、誰に向けて、何を伝えようとしたのかを資料から組み立てることです。本文そのものに加え、別の著作、草稿、書簡、制作記録、同時代の語の用法が証拠になります。著者の発言にも制作後の回想や自己説明が混じるため、発言された時期と対象作品との関係を記録します。
シュライアマハーは、発言を言語全体との関係から捉える文法的解釈と、個々の著者に固有の表現として捉える心理的・技術的解釈を組み合わせました。心理的・技術的解釈では、作品全体、著者の他の言語表現、歴史的状況を手掛かりに仮説を立て、部分と全体を往復します。作者の心を直観で言い当てる作業と同一視すると、この資料に基づく手順が抜け落ちます。
二十世紀の文学批評では、ウィムザットとビアズリーが、詩の成否を作者の私的な意図だけで決めることを「意図の誤謬」として批判しました。ガダマーも、テクストの意味は作者が当初考えた範囲を越えて、後の問いや歴史の中で現れると論じます。前者の論点は作品評価の基準、後者の論点は理解の歴史性にあります。
タロット図像の調査では、制作者の解説書や書簡は著者意図を考える重要な資料です。一方、カードに実際に描かれた人物、持ち物、色、配置は観察できる図像上の事実に属します。後世の占術書で加わった意味や、現在の相談で生まれる連想まで制作者の意図として遡らせるには、別の根拠が要ります。
実際の読みでは、「本文や図像に明示されていること」「制作時の資料から推定できる意図」「後世の受容」「現在の解釈」を四つに分けてメモします。どの資料が推定を支え、どこから解釈が始まるかを示せば、作者の証言を尊重しながら作品の複数の読みも比較できます。