神話

セレネ

せれね 別名:Selene

意味

セレネは、古代ギリシャ神話で月を神格化した女神です。ヘシオドスでは太陽神ヘリオス、曙の女神エオスの姉妹とされ、後世の美術では三日月や馬車を伴う姿、眠るエンデュミオンを訪れる物語で表されました。

解説

ヘシオドス『神統記』では、セレネはティタン神ヒュペリオンとテイアの娘で、太陽を表すヘリオス、曙を表すエオスの姉妹です。『ホメロス風讃歌』第32歌も、夜に光を広げる月の女神としてセレネをたたえます。ここでいう神格化とは、空に見える月そのものを人格を持つ神として語ることです。月の満ち欠けを説明する天文学とは目的が異なります。

古代美術では、頭部の三日月、馬または馬車がセレネを見分ける手掛かりになります。メトロポリタン美術館の3世紀初頭のローマ石棺では、馬車を降りるセレネが眠る羊飼いエンデュミオンへ近づき、反対側には馬車で昇るヘリオスが置かれています。三日月や馬車は作品上で確認できる図像です。夜、周期、再会という意味は、その配置や物語から読み取る解釈に当たります。

エンデュミオンの物語には、時代や作者によって異なる形があります。ローマ時代の石棺では、永遠の若さを保って眠る青年をセレネが訪れる場面が繰り返し表されました。したがって、セレネを眠りや反復する時間へ結び付ける読みには美術史上の根拠があります。一方で、誰が眠りを与えたか、青年の身分が羊飼いか王かといった細部は伝承ごとに違います。資料ごとの筋を併記することが、物語の幅を伝える方法です。

セレネは、後代に狩猟神アルテミスと同一視されることがありますが、古い文献では別の系譜と役割を持つ女神です。名前が出た資料の年代と文脈を確かめ、月そのものの神格ならセレネ、狩猟や野生、出産に関する役割ならアルテミスとして区別すると関係を追いやすくなります。占いや創作で月の周期、夜、眠りの象徴として用いる場合も、古代資料に記された事実と、後世の象徴的な応用を分けて記します。