哲学・心理

完備性

かんびせい 別名:completeness・完備性公理・選好の完備性

意味

完備性とは、どの二つの候補を取っても、少なくとも一方をもう一方と同等以上に望ましいと比較できる、という選好関係の性質です。この語が示すのは候補を一組ずつ比べられるという理論上の条件であり、情報の充足度は別の論点です。

解説

選択理論では、AをBと同等以上に望ましいと考える関係を「AをBへ弱く選好する」と表します。完備性がある時、任意のAとBについて、AをBへ弱く選好するか、BをAへ弱く選好するか、その両方が成り立ちます。両方が成り立つ無差別と、片方だけが成り立つ厳密な選好の二つの状態です。どちらも成り立たない組は比較不能で、その選好関係は不完備と判断されます。「完備」が示す対象は二候補間の比較関係です。情報量の充足は別の論点です。

標準的な選択モデルでは、完備性と推移性を合理的な選好の条件に置くことがあります。候補が有限なら、この二条件を満たす選好は効用の数値で順位を表せます。一方、完備性を現実のあらゆる判断へ課すべきかは議論の対象です。価値の性質が大きく異なる候補や、判断に必要な経験が乏しい候補では、本人が確かな比較を置けないことがあります。理論の前提と、実際の人がいつでも完全な順位を持つという事実主張には区別が必要です。

比較できない時は、まず理由を二つに分けます。費用や期限など必要な事実が欠けている場合、集める情報と再検討日が次の行動になります。家族との時間と職業上の達成のように評価軸が異なる場合は、外せない最低条件、優先する期間、後から変更できる範囲を整理する方法が有効です。それでも比較関係を置けない候補は「未決定」や「比較不能」と記録します。比較できる範囲と保留した範囲を記録しておくと、後の見直しで判断の根拠をたどれる状態です。

タロットでは、カード名、向き、人物、背景などが図像上の事実です。そこから二つの進路に優劣を付ける部分は占術上の解釈です。本人の選好の完備性は、各候補について本人が置く比較関係から判断します。選好順序は候補間の好ましさの関係全体、推移性はAとB、BとCの比較がAとCにも整合する条件です。不確実性下の選択は、結果や確率の把握が不十分な状況での選択です。四語を分けると、比較の可否、順位の整合、情報不足をそれぞれ点検できます。