哲学・心理
記憶的知識
きおくてきちしき 別名:memory knowledge・memorial knowledge・記憶による知識意味
記憶的知識は、過去に得た内容を記憶によって現在も知っている状態を指す認識論上の分類です。記憶が元の根拠を保つ仕組みなのか、現在の正当化を生み出せるのかには複数の立場があり、思い出した感覚に加えて真理と正当化の検討も要ります。
解説
記憶には、出来事を自分の経験として思い出すエピソード記憶と、名前や日付などの内容を覚えている意味記憶があります。記憶的知識の議論で中心になるのは、「会議は十時に始まると知っている」のように命題で表せる内容です。現在その内容を思い出せても、日付を取り違えたり、後から加わった情報を元の記憶と思い込んだりする場合があります。記憶の働きと、思い出した内容が真で知識に当たるかという評価は分ける必要があります。
記憶が正当化へ果たす役割には論争があります。保存説は、知覚や証言など別の源から得た正当化を、記憶が後の時点まで保つと考えます。生成説は、現在の想起や状況の変化によって、記憶が新しい正当化を生む場合も認める立場です。たとえば過去には根拠の弱かった内容が、後に得た情報との組合せで支えられる可能性があります。どちらの立場を採るかで、過去の取得時点と現在の想起時点に求める条件が変わります。
元の根拠を忘れても内容を覚えている「忘却された証拠」の問題があります。会議時刻を覚えている一方、メールで読んだのか同僚から聞いたのかを忘れた時、現在も正当化が残る理由をどう説明するかが論点です。逆に、予定変更の連絡という反対理由を忘れ、古い時刻だけを覚えている場合もあります。反対理由を忘れたことが信念の支えを自動的に強めるのかについても見解が分かれます。記憶の鮮明さと、現在利用できる証拠の強さは異なる尺度です。
予定を判断するなら、覚えている内容を一文にし、取得元、取得時期、更新の有無をたどります。「十時開始」は記憶している命題、カレンダーや主催者の最新連絡は現在の照合資料です。記録との照合で記憶の誤りが分かることも、記録の古さが分かることもあります。記憶的知識の有無を考える際は、元の取得経路、保持の仕方、現在の反対証拠を一続きの履歴として調べます。
タロット相談で振り返れる事実は、日付入りで残した質問、カード、向き、配置、当時の解釈文です。後日の「当たっていた気がする」は現在の想起であり、元の文そのものとは役割が異なります。記録を読む前に覚えている内容を書き、元の文と実際の出来事を照合する作業が、後から意味を広げた箇所を見つける手掛かりです。記録は記憶を点検する資料に当たります。一方、カードの解釈や予測の真偽は、実際の出来事から判定する対象です。認識的正当化、証言的知識、可謬主義の各ページは、現在の支え、他者から得た情報、訂正の余地を補います。