哲学・心理
持続時間の無視
じぞくじかんのむし 別名:duration neglect・持続時間無視・時間の無視意味
持続時間の無視とは、喜びや苦痛を伴う経験を後から評価する時、その経験が続いた長さを全体評価へ十分に反映しない傾向です。時間の影響が弱まる条件を指すため、記録方法や質問の仕方によって長さが評価へ表れる場合もあります。
解説
一九九三年の二つの実験では、参加者が長さと感情の強さを変えた快・不快の映像を見ました。一つ目では三十二人が映像を見ながら感情を記録し、終了後に経験全体を評価しています。二つ目では九十六人について、後から記憶で順位づける群と、事前に総合評価を意識した群を比べました。回顧評価に現れた時間の効果は小さく、感情が強かった場面など一部の瞬間へ重みを置いた平均として説明されました。
別の実験では、参加者が片手を摂氏十四度の水へ六十秒入れる試行と、もう片方の手を同じ条件へ六十秒入れた後、さらに三十秒続ける試行を比べました。長い試行の終盤は水温が摂氏十五度へ上がり、痛みは残るものの少し弱まる条件です。再体験する試行を選ぶ段階で、有意に多くの参加者が長い試行を選びました。終盤の痛みが弱まった条件が選択を左右し、総時間の長さは弱い手掛かりにとどまっています。ピーク・エンドの法則は最も強い場面と終わりの場面が回顧評価へ重く反映される傾向です。持続時間の無視は、経験の長さが評価へ入りにくい点に焦点があります。
持続時間が評価へ入る程度は、質問の設計でも変わります。長さを明示して尋ねる、経験中に総合評価を作る、比較の基準をそろえるといった条件では、時間への注意が高まりました。そのため、持続時間の無視は実験条件の平均傾向として読み、個人に固定した特徴として判定する用途から外します。語りの持続は、出来事にかかった時間と、その出来事を語る長さの関係です。一方、持続時間の無視は、実際に続いた時間を回顧評価へどの程度反映するかを表します。
関係や仕事を振り返る時は、「最後は落ち着いた」という総合評価と、経験の長さを別々に記録します。始まった日と終わった日、問題が起きた回数、一回あたりの時間、生活が戻るまでの日数が記録対象です。その後で最も負担が大きかった場面と終盤の状態を加えると、時間、ピーク、終わりを同じ表で比較できます。カードの図像から得た解釈は別欄に置き、期間には日付や回数を使います。こうすれば、短い好転が長い負担の評価を覆っているかを後から確かめられるでしょう。